生命 見つめて
氈鹿 かもしか
「ほーい。」
私はカモシカを見つけると、すぐに声をかける。遠くから気付かれずに撮影するほどの、望遠レンズを持っていない。
多少遠目からシャッターを切る。警戒のゆるい内にカメラに慣れてもらう。
相手が距離を取って離れて行くようになったら、それ以上近づかない。
そして、話し掛けながら写真を撮らせてもらう。
トーミノ頭にて
カモシカ。氈鹿。羚羊。ウシ科。日本固有。古い形態を残す特別天然記念物。
槍ヶ鞘にて
そこ、下りるの…
あれ、うずくまっちゃった。…今日のねぐら?
目の下の臭腺からの分泌物を岩に擦り付けて、テリトリーを主張…
日帰りでも
こんなに荷物を背負っているのに
君は身軽でうらやましい
でも君は
ここで暮らしている
こんな場所で
何があったのか
分からない…
私は
山で現実を見ることを教わった
そして
これも現実…
…親子
生命は連綿として
繋がって行く…